坂道雑文帳

乃木坂とか欅坂とかけやき坂とか。 / dont@forgetme.xyz

ひらがなけやき、アイデンティティの淵源。(1)

・「ひらがなけやき」とは何なのか

 「ひらがなけやき」とは何なのか。
 それは、彼女たちを追いかけてきたファンであれば誰しもが突き当たる問いであろう。あるいはそれより、他の誰よりもメンバーたちが追求し続けてきた問いであるともいえるだろう。
 当初は「欅坂46のアンダーグループ」として構想された「けやき坂46」は、2回のオーディションと数多くのライブなどを経て独自のアイデンティティを身につけ、単独アルバムのリリースを経た現在では「姉妹グループ」として紹介されることが多くなっている(「下部組織」と紹介されていた時代がもはや懐かしい)。「いま勢いのあるグループ」と評価されることも増えてきたように感じる。

 筆者はひらがなけやきのライブ公演については、かなりの数に参戦してきた。2017年のZeppツアーはライブビューイングを含めれば全公演(東京幕張は各1公演のみ)、日本武道館3DAYSには2日間、おもてなし会も1期2期とも、「走り出す瞬間」ツアーには計4公演、といった具合である。
 本稿は、そんな筆者が追いかけてきた限りのひらがなけやきの歴史を通して、彼女たちがアイデンティティを身につけてきた過程について振り返り、この「勢い」がどこからくるのかを探ろうとするものである。

・手探りの「ひらがなおもてなし会」

 ひらがなけやき初の単独イベントとなった「ひらがなおもてなし会」(2016年10月28日)を振り返ると、メンバー個々のポテンシャルの高さは随所に見えていたものの、何もかもが手探りだったんだな、と改めて感じさせる。
 メンバーが自己紹介したキャッチフレーズやキャラクターが現在ほぼ生き残っていないことはまあ当然のことであるとしても(そのなかにあって「ラーメン」「バビ語」を現在も続けている齊藤京子はさすがだ)、MCで中心的な役割を果たしていたのは長濱ねるであったし、ミニライブのパートで披露された「サイレントマジョリティー」「世界には愛しかない」「ひらがなけやき」の3曲でも、すべて長濱がセンターポジションを務めていた。
 経験してきた場数を考えれば仕方ないといえば仕方ないのだが、兼任などですでに多忙であった長濱をかなりの部分で頼ったイベントであったな、という正直な感想がある。

 その他にもこの「ひらがなおもてなし会」は、チケットが500円という破格の設定であった上に(これは漢字欅の「おもてなし会」と同じだが)、メンバーが赤坂サカスでチケットをゲリラ的に手売りするなど、新人らしい試みもみられた。すでに人気メンバーであった長濱の存在を考えればやりすぎともいえる状態だったが、全国握手会でのひらがなメンバーレーンの過疎ぶりを思い出せば、一定以上に危機感のようなものもあったのかもしれない。

・原型としてのZepp Tokyo公演

 しかし、この「長濱一強」のような状況はすぐに変化していく。
 まず、直後のライブであった有明コロシアムでの「欅坂46ワンマンライブ」(2016年12月24日・25日)では、ひらがなメンバーによるMCを佐々木久美が回すようになった。これが現在まで変わらず続いているのは周知の通りである。
 そして、次のライブとなったZepp Tokyoでの単独公演(2017年3月21・22日)では、フォーメーションの面でも変化があった。「世界には愛しかない」のセンターが影山優佳に変更されたほか、新たにセットリストに加わった「二人セゾン」のセンターを柿崎芽実が、ソロダンスを井口眞緒が務めたのである。
 ほかにも「手を繋いで帰ろうか」が齊藤京子高本彩花を中心に披露され、ユニット曲のコーナーや洋楽曲のコーナーも設けられるなど、メンバーそれぞれの個性が光る場面が随所にみられ、以後始まる全国ツアーの原型となった公演となった。

・「センターが静かに代わる」強み

 ここにみられるひらがなけやきの強みのひとつが「センターが流動的であること」である。漢字欅の曲をカバーする形でパフォーマンスをするなかで、前述のように多くのメンバーがセンターポジションを経験した(これらのほかにも、ツアーの中では加藤史帆が「制服と太陽」で、齊藤京子が「語るなら未来を…」でセンターを務めている)。
 このような下地もあってか、ひらがなけやきのオリジナル曲ではセンターが頻繁に交代している。長濱在籍時(「永遠の白線」までの4曲)は長濱+柿崎で長濱の兼任解除後は柿崎へ移行、「それでも歩いてる」「NO WAR in the future」では齊藤、「イマニミテイロ」「期待していない自分」では佐々木美玲、「ハッピーオーラ」では加藤史帆、という具合である。また、2期生曲では小坂菜緒がセンターを務めている。

 これらをもって、平手友梨奈をセンターポジションに固定している漢字欅と対照的である、と述べるのは容易い。しかしそれ以上に、AKB48以降、坂道シリーズも含め、そこに誰が立つかということがドラマであり続けた「センター」という仕組みを解体したことによる強みがあるように思う。
 メディア露出が少なかったという要因もあったのかもしれないが、2018年8月5日放送の「ひらがな推し」で「ハッピーオーラ」のポジションが発表されるまで、センターを含むポジションが公式や各メディアで特段あげつらわれることはなかった。「センターは誰だ!?」と煽られることもなければ、センターメンバーをライブステージ以外で何かの矢面に立たせることもなかったわけである。

 センターが交代すればそれだけグループは違った表情を見せるし、センターを経験したメンバーは確実に成長する。ポジションをめぐる環境が静かななかでセンターが流動的に交代し続けたことは、ひらがなけやきのパフォーマンスを確実に向上させ、ライブで肌で感じる「勢い」を形成してきたのだ。