坂道雑文帳

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ひらがなけやき、アイデンティティの淵源。(4)

・メンバー増員の経験

 前回の記事では、早い段階でメンバーの喪失を経験したことがグループの強みとなった、ということを書いた。今回は、早い段階でメンバーの増員を経験したことが、これもまたグループの強みとなった、ということを書いていきたいと思う。

 ひらがなけやきは、坂道シリーズの他の事例と比べ、かなりハイペースで新規メンバーの追加を経験してきたグループである。「坂道合同新規メンバーオーディション」で漢字欅が2期生を、ひらがなけやきが3期生を迎えることになるというのは非常にわかりやすい例である。他の例をみても、ひらがなけやきの1期生と2期生の発表の間は約1年3ヶ月、2期生と3期生の発表の間がおそらく約1年となるのに対し、坂道シリーズで最も短い他の事例である乃木坂46の結成から2期生の発表までに約1年9ヶ月を要している。乃木坂3期生と漢字欅2期生がともに3年ぶりの募集であったことなども考えれば、ひらがなけやきの募集はやはりハイペースだと評価することができるだろう。
 むろん、こうしたハイペースな募集の背景には、1期生が当初12人と少なかったことや、「坂道合同新規メンバーオーディション」との兼ね合いもあるだろうから、単純に比較して相対的な評価を下すことはできない。しかし、全国ツアーで勢いをつけている中での2期生の加入・合流(2017年8月15日に発表)によって、ひらがなけやきがさらに勢いを増したことは疑いない。

・幕張FINAL、ツアー最後の試練

 さて、全国ツアー地方公演の最後となった福岡サンパレスホール公演(11月6日)も無事に成功させ、「全国ツアーFINAL!」と題された幕張メッセイベントホールでの2DAYS(12月12・13日)。ツアーの集大成となる公演を大きい会場で見られることが楽しみだったし、タイミング的にも2期生の登場も期待されるところであった。また筆者個人としては、まさかのアリーナ最前列中央の座席を引き当てており、とにかく楽しみで仕方なかったことをよく覚えている。
 柿崎芽実の骨折が報じられたのはそんな矢先、公演初日の朝のことだった。
 ローラースケート演出のリハーサル中の骨折。幕張公演への出演は見送り、ローラースケート演出も当然中止。最終公演に事故でメンバーが欠けてしまう。これ以上ないほどの悲劇的なニュースだった。

 しかし、残された時間がほぼないなかで、メンバーは見事に柿崎の不在をカバーしてみせる。1曲目の「ひらがなけやき」、1列になって登場するメンバーの先頭は高瀬愛奈だった(長濱と柿崎が両方欠けて繰り上がった形)。「世界には愛しかない」でのポエトリーリーディング、おもてなし会から一貫して柿崎が務め続けてきた今泉パートを、初めて加藤史帆が務めた。アンコールの「二人セゾン」では、井口眞緒が曲全体を通してセンターを務めた。全体をみてもローラースケート演出の不在を感じさせるところはなく、ツアーファイナルにふさわしい、完成度の高い公演となっていたように思う。

・新風、2期生初ステージ

 そして、その完成度の高い公演に新鮮味を吹き込んだのが、ライブ中盤での2期生の登場であった。
 大きな声で元気よく登場した金村美玖を皮切りに、9人がそれぞれ個性を活かした自己紹介を行う。なかでも富田鈴花がラップに乗せて自己紹介をし、「Say パリピ!」とコール&レスポンスをしたシーンは、同じように自己紹介をしてきた漢字欅ひらがなけやき1期生をすべてあわせても最も盛り上がったシーンだったといえるのではないだろうか。
 続いて今回のライブで初披露された、2期生も交えた「NO WAR in the future」。これまでのひらがなけやきにはなかった人数で行われたパフォーマンスで、大きなステージとあいまって非常に迫力を感じたことをよく覚えている。

 その後のMCは、すっかり定着した佐々木久美の回しでバランスよく1期生と2期生がかけ合い、グループとしての一体感を早くも感じさせるものとなっていた。
 早い段階で加入した2期生を一体感をもって迎えることができたのは、単独の全国ツアーで積み重ねてきた場数、佐々木久美のリーダーシップ、1期生にとっても当初は先輩であった長濱ねるの存在など、ひらがなけやき固有の強みによるところが大きかったのではないだろうか。
 そしてこの強みは、この夏に3期生を迎えるにあたっても、存分に活きてくるだろう。新メンバーを迎えてのさらなるパワーアップに期待したいところだ。