坂道雑文帳

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アンダーライブ全国ツアー 九州シリーズによせて(1)

 

 

(1)「アンダー」前夜(選抜発表から音源解禁まで)

「誰かに聞かれた 『あなたの人生はどこにあるの?』
 当たっていない スポットライト」


 乃木坂46・18thシングルアンダー曲「アンダー」。
 アンダーメンバーの葛藤にぴたりと重なるあまりにもストレートな歌詞、そしてタイトル。歴代の楽曲のなかで、これほどまでにどう受けとっていいか迷った曲はない。メロディ・歌詞とも、個人的には指折りの好きな曲でもあった。冷たい仕打ちだと切り捨てて怒るのはファンとしては簡単で、しかしこの曲を受け止めてステージに立たなければならないのはメンバーなのである。

 また筆者は今年、アンダーライブ全国ツアー九州シリーズの初演と千秋楽に参戦する機会に恵まれた。その感想を、「アンダー」に関する逡巡とともに述べようとするのが、この文章である。

 ■

・久しぶりの「選抜落ち」と「アンダー」

 「アンダー」という曲名が公開されたのは、7月14日。
 その2週間前の明治神宮野球場において、アンダーライブ全国ツアー九州シリーズの開催と、アンダーアルバムのリリースが発表されたというタイミングでもあった。その時点で、何か重要な意味合いを持つ曲であることは、誰にとっても察しがついていたといってもいい。直前の「乃木坂工事中」では、3期生の大園桃子与田祐希のWセンター抜擢と、17thシングル選抜メンバーからの斉藤優里中田花奈樋口日奈北野日奈子寺田蘭世の選抜落ちが発表されてもいた。

 曲名公開からさらに1週間後。7月21日の「沈黙の金曜日」において、ほぼフルに近い形で音源が解禁された。ポジションまでは特定できないものの、表題曲「逃げ水」と同様のWセンターであることは歌い出しから特定できた。そして、その歌い出しを歌ったWセンターのうちのひとりは、その声から間違えようもなく中元日芽香であったし、18thアンダーメンバーの名前を並べながらもう一度音源を聴けば、もう一人は疑いようもなく北野日奈子であった。実際には勘の部分も多少は含まれていたかもしれないが、それは確かに当たってもいた。
 そうして筆者の逡巡が始まった。楽曲の正式リリースまでの間も、何度も録音した音源を聴いた(曲紹介のときの中田花奈アルコ&ピースのやりとりまで、いまも鮮明に覚えている)。

 選抜メンバーの変遷をたどれば、前述の5人の「選抜落ち」(選抜メンバーからアンダーメンバーへの移動)は、15thシングルでの伊藤万理華井上小百合以来、1年以上ぶりのことであった(この間選抜メンバーから外れたのは、卒業した深川麻衣橋本奈々未と、休養に入った中元日芽香のみ)。その前をさらに遡るならばさらにシングルが1枚飛び、13thシングルでの斉藤優里新内眞衣にまでなってしまう。
 遡れば劇場をもたないこと総選挙のようなものを行わないこと、あるいはアンダーライブの存在も含めて「選抜とアンダー」という区分けが、乃木坂46の大きな特徴のひとつであった。一方でかつてのように激しい選抜・アンダー間のメンバーの往来はなくなり、「選抜の固定化」が語られるようにもなっている。
 そのようななかで3期生が加入し、選抜入りも期待される頃合いである。秋元真夏堀未央奈の例を改めて引くまでもなく、何かここ数年にはない動きがあることが予見されていたところでもあった。そのタイミングで、3期生抜擢とセットで満を持して切られたのが「選抜落ち」というカードであったように思う。


・筆者にとっての中元日芽香北野日奈子

 偉そうに歴史について少し述べてきたが、筆者自身が乃木坂46に出会ったのは14thシングル期のことである。最初にきちんと見た選抜発表は15thのそれであり、齋藤飛鳥のセンター抜擢がもつ意味も、福神に復帰した松村沙友理の涙の意味も、正直に言えばそのときはよく理解できていなかった。
 同じく、中元日芽香北野日奈子の選抜入り、伊藤万理華井上小百合の選抜落ちの意味もよくわかっていなかったといってもいい。しかしだからこそ、筆者にとって中元日芽香北野日奈子は特別な思い入れのあるメンバーでもある。裸足で砂浜に歌い踊る中元と北野は、筆者にとって(選抜メンバーとしての)乃木坂46の第一印象に含まれるのである。

 だから16thシングルでふたり揃って連続での選抜入りを果たしたときは嬉しかったし、あるいは「連続での選抜入り」がもつ意味も、もう少しわかるようにもなっていた。中元・北野・中田・堀・寺田によるユニット、サンクエトワールが2曲目「君に贈る花がない」をもらったことも明るい材料であった。だからこそ中元が休養に入ったときはショックが大きく、さらに17thシングルでは中田と寺田が揃って新たに選抜入りを果たし、サンクエトワールの全員の選抜入りもあったかもしれないと思うと歯がゆかった。

 話を「アンダー」に戻したい。久しぶりに切られた「選抜落ち」というカード、落ちてしまったメンバーにあてがわれたのがこの曲かと思うと、正直なところ感情をどこへ置けばいいのかわからなかった。一方で、曲としては非常に好きなメロディであり歌詞であった。あるいはこのタイミングでこの曲があてがわれた意味も、何かあるはずだと感じる部分もあった。